top of page

色の中の色 ー植物との対話ー
Colors in the color   ーDialogue with plantsー

 

素材 綿、絹、植物染料
2022年制作

Material  Cotton,Silk,Natural dyes
Year of creation 2022
Photo by Tomas Svab

たくさんの色数の色鉛筆を使って、子どもたちと絵を描くワークショップをしたことが何度かあります。その時、しばしば、子どもたちに本当の赤が見つからない。本当の黒が見つからない。本当の青が見つからないと言われて、500色ほどあった色鉛筆の中から、本当の赤を一緒に探しました。今から思えば、子どもたちの本当の色は12色セットの中にある色で、それはまるで、音楽のドレミファソラシドの正しい音階のように、彼らは自分達が知っている正しい色調で色を使いたがったのだと思います。
私は主に植物から色素を抽出して色を作ります。それは子どもたちが探した本当の12色とは違った色で、色の中に何色もの色が存在する色です。古代の紫の研究でのことですが、紫の色を染める紫根の中に、紫色に発色する「シコニン」と呼ばれる色素が含まれています。しかし、それだけではなく、他にもタンニン等たくさんの色素が含まれています。古代の染め方で紫色を染色するには、できるだけ他の色素と混合しないような温度と時間のタイミングで抽出と染色を繰り返さなければなりません。私は3年近く、美しい紫色を見ることができず、灰色混じりや赤茶混じりの紫がかった色を染め続けることとなりました。そして、次の段階で分かったことは、「シコニン」と呼ばれる色素も何種類もあり、紫草の個体によってばらつきがあるということでした。
 植物を抽出して使う色は、プリミティブな民族楽器の音や自然の音に似ています。ドレミファソラシドの音階の外や間にある色です。植物染料の色を知れば知るほど微妙に違う色との出会いがあり、それがとても魅力的です。
今回のギャラリー白の作品は、植物から染料を抽出し、色糊にしてスキージーで引いています。刷毛ほど時間に余裕はなく、自己コントロールができません。自分のいろんな性格が形になって出現し、その一瞬で出てきた画面を蒸して、水洗いをして、時間をかけて作品にします。そこには一瞬のその時の自分が閉じ込められているようで、何度も過去の自分と向き合うような気持ちになります。色素に使う植物のこと、自然と人との関わり、色にまつわる歴史、自らとの関わりなどを多くのことを植物染料の中にある「色の中の色」と対話するように制作をしました。

bottom of page